スチール缶とアルミ缶の違いとは?飲料缶の選び方の科学的な根拠とは

スチール缶とアルミ缶の違いとは?飲料缶の選び方の科学的な根拠とは 身のまわりの科学
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普段何気なく手に取る缶飲料。

実は2種類の缶が使い分けられています。

1つ目が手で力を加えても簡単に変形しない硬い缶「スチール缶」

もう1つが変形しやすく柔らかい「アルミ缶」です。

でも、手に取ったその缶が「スチール缶」か「アルミ缶」か意識することは少ないかもしれません。

実は、飲料メーカーはそれぞれの缶を使い分けており、選択には重要な理由があるのです。

本記事では、スチール缶とアルミ缶の成分の違いや、どのように使い分けられているかを科学的な視点で解説します。

また、リサイクルの違いにも触れ、どちらがより環境に優しいかについても考察します。

それでは、身近な缶飲料に隠された意外な秘密を見ていきましょう!

はじめに

私たちが日常的に手に取る缶飲料。

何気なく手に取っているその缶には、「スチール缶」と「アルミ缶」という2種類の素材が使われていることをご存じでしょうか?

これらの缶は、見た目ではあまり区別がつきませんが、素材の違いによって性質やリサイクル方法に違いがあります。

それではまず、スチール缶とアルミ缶の成分の違いから見ていきましょう。

スチール缶とアルミ缶の成分の違い

まず、スチール缶とアルミ缶の基本的な成分について見ていきましょう。

スチール缶とアルミ缶は名前の通り、使用されている素材が大きく異なります。

スチール缶は、鉄を主成分とするスチール(鋼)で作られています。

スチールは鉄 (Fe) と少量の炭素 (C) を主成分とする合金で、アルミニウムに比べると重く、非常に強度が高いのが特徴です。

ただし、サビやすいという欠点があるため、缶の表面にはサビを防ぐために、錫 (スズ:Sn) や亜鉛 (Zn)のコーティングが施されています。

このコーティングにより、缶の中身が金属と反応して劣化するのを防いでいます。

一方で、アルミ缶はアルミニウム (Al) を主成分として作られています。

アルミニウムは非常に軽く、サビにくいというスチールとは対照的な性質を持っています。

アルミニウムは酸素 (O2) との化学親和性が非常に強く、酸化被膜と呼ばれる薄い酸化アルミニウム (Al2O3) の層が自然と表面に生成されます。

この膜が表面を保護する役割を担っているため、アルミニウムはサビにくくなっています。

缶を使い分ける理由

では、なぜ飲料メーカーはスチール缶とアルミ缶を使い分けているのでしょうか?

その理由は、主に缶自体の物理的な特性とコスト (費用) にあります。

例えば、炭酸飲料やビールにはアルミ缶が多く使われます。

アルミ缶はスチール缶ほど硬くありませんが、炭酸ガスが内側から缶を押すことで、形を保つことができるからです。

一方、スチール缶は強度が高く、中から押す力がなくてもへこみにくいため、缶コーヒーなど炭酸の入っていない飲料に使われてきました。

最近は、中身を詰めるときに窒素ガスを入れて内側から押す技術が広まり、炭酸の入っていないお茶やコーヒーにもアルミ缶が使われるようになっています。

また、アルミ缶は軽量で、輸送のコストが低くなるのもメリットです。

さらに、アルミは加工しやすく、デザインの自由度が高いため、デザイン性が重要視される商品でもよく使われています。

スチール缶 アルミ缶
成分 鉄 (Fe) + 少量の炭素 (C) アルミニウム (Al)
錆びやすさ サビやすい(表面処理が必要) サビにくい
磁石 くっつく くっつかない
強度 強い 弱い(中からの圧力で形を保つ)
重さ 重い 軽い
主な缶飲料 缶コーヒーなど 炭酸飲料、ビールなど
(最近はお茶・コーヒーにも)

ちなみに、同じ体積のスチールとアルミニウムの重さを比べると、およそ3倍の差があります。

これはスチール (Fe)とアルミニウム (Al) の密度から計算することができます。

スチール、アルミの密度比較

製造コストと環境への影響

スチール缶とアルミ缶の使い分けは、製造コストや環境への影響が大きく関わっています。

まず、スチールは原料としてのコストが比較的安く、大量生産に適しているのが特徴です。

しかし、鉄は重量があるため、製造後の運搬コストは増加しがちです。

また、スチールはサビやすい性質があるため、製造時には防錆処理を行う必要があります。

一方で、アルミニウムは非常に軽量で、運搬コストを大幅に削減できる点が大きな利点です。

しかし、アルミニウムを原料から新たに生成するためには、原料のボーキサイトから精錬 (せいれん:電気分解や化学処理により金属の純度を高めること) する過程で非常に多くのエネルギーを必要とします。

具体的には、電気分解のプロセスが含まれており、大量の電気エネルギーが必要となります。

このことが、アルミニウムの製造コストを高くする要因となっています。

そのため、アルミニウムは軽量でありながら、製造自体には高いコストがかかる素材です。

スチール缶のリサイクル

スチール缶は、リサイクルが非常に効率的に行える素材です。

スチールは磁石に引き寄せられる磁性を持っているため、磁石を使って簡単にスチールを分別することができます。

この分別のしやすさから、スチール缶のリサイクル率は非常に高く、90%以上に達しています。

また、リサイクルされたスチールの品質は非常に高く、何度でも使用することが可能です。

製造時のコストとの環境負荷を考慮すると、鉄鉱石から新たにスチールを作るよりも、リサイクルされたスチールを使う方がエネルギー効率が良く、二酸化炭素の排出量も削減することができます。

アルミ缶のリサイクル


アルミ缶リサイクル
阪和興業株式会社HPより

アルミ缶のリサイクルも非常に効率が良く、アルミニウムも何度でも再利用が可能です。

新しいアルミニウムをボーキサイトから製造する際には、非常に多くのエネルギーを消費しますが、リサイクルする場合には、そのエネルギー消費を約95%も削減することができます。

これはアルミニウムのリサイクルの大きなメリットです。

ただし、アルミニウムはスチールのように磁石を使っての分別ができません。

分別に手間がかかることもあり、リサイクルにおけるエネルギー消費はスチールに比べてやや高めです。

それでも、スチールと同様にリサイクルされたアルミニウムを使う方が新規製造する場合よりもエネルギー効率が格段に良く、環境への影響を軽減できることがわかっています。

家で見分けてみよう:磁石を近づけるだけ

リサイクルの分別と同じように、家でも磁石を使えばスチール缶とアルミ缶を見分けられます。

空き缶の胴体に磁石を近づけてみてください。

くっつけばスチール缶、くっつかなければアルミ缶です。

冷蔵庫に貼るような弱い磁石でも試せますが、小さくても磁力の強いネオジム磁石を使うと、違いがはっきりわかります。

(ネオジム磁石は力が強いので、指をはさまないように注意してください。小さな子どもが飲み込まないよう、保管にも気をつけましょう。)

まとめ

スチール缶とアルミ缶は、それぞれの強度や重さ、サビにくさなどの特性により中身の飲料の種類が使い分けられています。

スチール缶は強度が高く、中から押す力がなくても形を保てるため、缶コーヒーなどに使われてきました。原料コストが低いことも特徴です。

一方、アルミ缶は炭酸ガスや窒素ガスで内側から押すことで形を保つため、炭酸飲料やビールに多く使われます。軽量で運搬しやすく、加工もしやすいですが、新規製造には高いエネルギーが必要です。

どちらの缶もリサイクルが効率的に行われており、特にアルミ缶のリサイクルは新規製造に比べてエネルギーの消費を大幅に削減することができます。

次回、缶飲料を手に取る際には、スチール缶かアルミ缶かを意識してみると、新たな気付きがあるかもしれませんね。

参考文献・参考資料

  1. サントリー お客様センター.「アルミ缶とスチール缶に分けている理由はありますか?」. 取得先: https://www.suntory.co.jp/customer/faq/001967.html
  2. JFEホールディングス株式会社.「鉄の価値」. 取得先: https://www.jfe-holdings.co.jp/sustainability/sus/steel_value/index.html
  3. 経済産業省. 「第3回 資源循環産業技術・イノベーション推進委員会 資料」. 取得先: https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/pdf/003_03_00.pdf
  4. 日本軽金属ホールディングス株式会社. 「リサイクル あるみらい」. 取得先: https://www.nikkeikinholdings.co.jp/csr/dna/feature2013/02.html
  5. UACJ株式会社. 「社会課題解決に貢献するアルミニウム」. 取得先: https://www.uacj.co.jp/ir/library/pdf/2021/02_2021uacjr.pdf

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