【有機化合物】【無機化合物】って何? 「この2つはどう違うの?」 「具体的な例は?」
この記事では科学的な知識がなくても理解できるよう用語の説明や、図を使って、これらの疑問にわかりやすくお答えします。
今回は本題に入る前に、少しだけ知っておいてほしい用語があります。
わたしたちの身のまわりには、空気や水 (H2O)、金属など様々な物質があります。
これらのほとんどの物質は、いろいろな種類の物質が混ざり合ってできています。
例えば、空気は約78%の窒素 (N2)と20%の酸素 (O2)、残りは二酸化炭素 (CO2)やアルゴン (Ar) など様々な気体が混ざり合ったものですし、目の前のペットボトル入りジュースの成分表示ラベルを見てみても、多くのものが材料として含まれています。
このように、いろいろな物質が混ざり合ったものを「混合物」といいます。
一方で、酸素 (O2) や 水 (H2O)、鉄 (Fe) のように化学式で書くことのできる物質は混ざりものでない単一の物質であり、「単体 (たんたい)」と呼ばれます。
※空気やお茶、木などは化学式で書くことができず、これらは色んな物質からできている混合物です。
この記事で登場する「物質」はこの単体を指していることを覚えておいてください。
やや前置きが長くなってしまいましたが、最初に有機化合物と無機化合物の関係について、理解しておきましょう。
もの凄く簡単に言うと、有機化合物とは炭素を含む物質 (化合物)であり、有機化合物でないものは全て無機化合物です。
つまり、この世の物質の全ては有機化合物か無機化合物に分類されるというわけです。 (しつこいですが、単体に限った話ですよ)
ただし、何事にも例外はつきもので、炭素を含むものの、無機化合物に該当する物質も存在します。
有機化合物と無機化合物の大まかなイメージをつかんでもらったところで、2つの違いについて詳しくみていきましょう。
有機化合物
有機化合物とは主に炭素(C)を含む物質
一部例外はありますが、基本的に炭素原子 (C) を含む物質は、有機化合物と考えて良いでしょう。
例えば、身のまわりにある紙、ペットボトル、ガソリンなどは全て炭素原子を含む化合物が主成分であり、いずれも有機化合物に分類されます。
- 紙 :セルロース
- ペットボトル :ポリエチレンテレフタレート
- ガソリン :炭化水素
これまでに知られている有機化合物は数千万種類以上と推測されますが、種類の割に有機化合物を構成する元素の種類は比較的少なく、炭素 (C), 水素 (H), 酸素 (O), 窒素 (N), 硫黄 (S), リン (P), ハロゲン (フッ素:F, 塩素:Cl, 臭素:Br, ヨウ素:I) が主な構成元素です。(一部にはFe、Mgなどの金属元素が含まれることもある。)
つまり、少ないパーツながら、その組み合わせはほぼ無限大というわけです。レゴブロックみたいなイメージですね。
実際に日々新しい化合物が合成、発見されており、2015年にはこの1年間だけで約1000万種類の化合物が新規物質として登録されています。
例外:炭素(C)を含むが、有機化合物でない物質
炭素(C)を含む化合物でも一部例外があります。例えば、次のような場合です。
- 黒鉛やダイヤモンドなどの炭素単体
- 一酸化炭素や二酸化炭素など、炭素の酸化物
- 炭酸カルシウムなどの炭酸塩
- シアン化カリウムなどのシアン化物
でも、なぜこれらが炭素を含むにも関わらず、有機化合物ではないのか?
それには科学の歴史的な背景が関係しています。
生命に関係する化合物 = 有機化合物?
元々、有機体 (organism:生物) を構成する化合物を有機化合物 (organic compound)と呼んでいました。
例えば、炭水化物やタンパク質、糖類、脂質、ホルモン、 ビタミン、DNA (核酸) などを構成するのも有機化合物です。
19 世紀中頃までは有機化合物を作るのは、生命体 (有機体、生物) だけであり、非生命体である無機化合物 (例えば、石や金属) から有機化合物が発生することはありえない と考えらえていました。 このように「生命には非生物にはない特別な力がある」とする考えを生気説 (せいきせつ) と言います。
このような考えが背景にあったため、当時は生命に関係する化合物は有機化合物、それ以外は無機化合物として区別されていました。
ただし、この考え方はドイツ人科学者 ウェーラーによって否定されます。
ウェーラーは尿中に含まれる尿素 (生命に関係するため有機化合物) を、無機化合物から合成することに成功したのです。
さて、困りました。
ウェーラーによる尿素の合成前は、「有機化合物は生命が産生する物質である」と定義されていたため、二酸化炭素、炭酸塩、シアン化物など炭素を含むいくつかの物質はすでに、無機化合物として分類されていたのです。
しかし、気付いた時にはすでに遅し、「まぁいいか」ということで、これらの化合物はそのまま無機化合物として分類されており、一部の例外になっているわけです。
※もちろん、現在では生命に関係しない化合物でも有機物化合物は多数存在しています。上で紹介した紙、ペットボトル (プラチチックの仲間)、ガソリンは生命には関係ありませんが、有機化合物でしたね。
無機化合物
続いて無機化合物についてですが、無機化合物は覚え方が簡単です。
有機化合物でない物質は、全て無機化合物に分類されます。
もう少し詳しく説明すると、炭素を含まない化合物および、簡単な炭素化合物 (CO2など) を無機化合物と呼びます。
身近なところでは、水 (H2O) や食塩 (NaCl)、金属、お掃除用の重曹 (NaHCO3) などが無機化合物に該当します。
また、1種類の元素からなるもので、H2(水素)・S(硫黄)・C(炭素)・O2(酸素)・P(リン)なども無機化合物に分類されます。
無機化合物はいくつかの種類に分けることができ、例えば、酸化物、水酸化物(水酸化イオンを含む化合物)、オキソ酸(酸素原子を含む酸)、塩 (えん) といった分類があります。
ちなみに、「食塩が無機化合物なら…」と間違いやすいのが「砂糖」です。
砂糖はスクロース (sucrose:またはショ糖とも)が主成分であり、立派な有機化合物です。調味料として対比の関係で並べられることの多い「塩と砂糖」ですが、化学構造上の違いは下の図を見ると明白ですね。
まとめ
- 基本的に炭素を含む物質は有機化合物
- ただし、二酸化炭素など単純な化合物は無機化合物に分類される
- 有機化合物でない物質は無機化合物
参考
CAS登録番号が1億件を突破:
https://www.jaici.or.jp/annai/img/20150709_CAS_PressRelase.pdf
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