プラチナってどんな金属?
プラチナ (元素記号:Pt) は白金 (はっきん) とも呼ばれ、金や銀と同様に宝飾用貴金属の代表ですよね。
身近な例では、結婚指輪のリング部分に白金が使われることが多いようです。
これは白金の化学的な安定性、つまり汗をかいたり、水につけたり空気に晒したりしても変化しにくい という特性が役立っています。
例えば、鉄 (Fe) やアルミニウム (Al) は薄い酸溶液 (希酸:きさん) と反応して徐々に溶けてしまいますが、金 (Au) や白金のような化学的に非常に安定な金属は、「王水 (おうすい)」という超強力な酸化力を持つ酸でないと溶かすことができません。
※王水:濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積比で混合した橙赤色の液体、強力な酸化力 (相手から電子を奪って反応する性質) を持つ
希少性や化学的安定性、宝飾用貴金属として利用されるなどの共通性から、金と比較して語られることの多い白金ですが、その産出量は金よりずっと少なく年間 約200トンです。(金は年間 約7000トン)
また、白金は限られた場所でしか採掘することができず、産出量全体の約75%を南アフリカが占めています。(二位はロシアで約17%)そうです。白金はいわゆるレアメタルと呼ばれる金属です。(参考:田中貴金属工業HP)
そんな白金ですが、宝飾品としての利用以外にも様々なところで活躍しています。
プラチナの利用方法
プラチナの宝飾品以外の用途として最も多いのが、触媒としての利用です。
宝飾品も合わせた全体の用途の内、約40%が触媒としての用途です。
触媒
触媒の中でも代表的な例は、自動車排気ガス浄化用触媒です。
この触媒は、その名の通り自動車の排気ガス中に含まれている”環境や人体に対して有害な物質”を”無害な別の物質”に変えるための触媒です。
自動車はエンジンでガソリン・軽油などの燃料を燃焼させることで、車を走らせるエネルギーを得ています。
排気ガスは燃料を燃焼させた際に生じる気体のことで、一酸化炭素 (CO)、二酸化炭素 (CO2) のほか、炭化水素 (HC) や窒素酸化物 (NOx) が含まれています。この内、一酸化炭素 CO は人体への有害性、炭化水素 HC、窒素酸化物 NOxは環境汚染の原因物質であるため、これらを別の無害な物質に変えてから大気中に放出する必要があります。
そこで、自動車排気ガス浄化用触媒では、下の図のように排気ガスを触媒に通すことで、有害物質を無害な水 (H2O)、窒素 (N2)、二酸化炭素 (CO2) として待機中に放出しています。
ここで使用される触媒は、HC、NOx、COの3種類の有害物質の変換を行うため、「三元触媒」と呼ばれ、エンジンからマフラーの間にある触媒コンバーターという装置に入っています。
燃料電池
ガソリン・軽油などの石油資源を燃料としない燃料電池を動力源とする自動車 (Fuel Cell Vehicle:FCV) の実用化が始まりつつありますが、燃料電池の電極部分にも白金が使用されています。
燃料電池とは、水素 (H2) と酸素 (O2) を反応させて電気を発生させる装置です。
理科の実験で習う 水の電気分解の逆と考えるとわかりやすいかもしれません。電気分解では水に電気を流すと、水素と酸素が発生しました。燃料電池では逆に、水素と酸素を反応させることで、電気を発生させています。
※右図に「水(2H2)」とありますが「水素(2H2)」が正しいです。
この際、電池のプラス極とマイナス極に相当する「電極」には、反応を促進させるための白金が触媒として使用されています。
これは白金が水素 (H2) と酸素 (O2) から水 (H2O) を作る反応を促進するという特性に加え、 耐酸性、耐食性などの化学的に安定である点も重要となっています。
もしも、月に1回バッテリー (電池) 交換が必要・・・なんてことになると、メンテナンスが大変ですよね。 でも、安心してください現在出回っている燃料電池は、白金の特性も手伝って7年程度の寿命となっています (2020年時点)。
※今後の技術発展により、もっと寿命が長くなることと考えられます。
その他の用途
白金には触媒以外にも様々な利用用途があります。その代表的な用途は以下の通りでう。
科学実験分野
化学的に極めて安定であること、融点が1,769 °Cと高いことなどから、金属を溶かすために使う「るつぼ」、微生物の移植に用いる「白金耳」などに利用されています。
医療分野
・抗がん剤:シスプラチンという名で知られる抗がん剤の1種。
化学名はシス–ジアミンジクロロ白金(II)(cis-diamminedichloro-platinum(II)、cis-[PtCl2(NH3)2])
・ペースメーカー、カテーテルなどの医療器具 → 体内での安定性、生体適合性、微細化加工性、放射線透視下での視認性に優れるため。
おまけ:プラチナとホワイトゴールドの違い
アクセサリーには「ホワイトゴールド」という素材が使われたものも多くみられます。
ホワイトゴールド = 白い金 ですよね。
でも、実はプラチナ (白金) とホワイトゴールドは全くの別物なのでご注意を!
色味はプラチナもホワイトゴールドも似た銀白色をしてますが、ホワイトゴールドは金 (Au) にニッケル (Ni) またはパラジウム (Pd) を混ぜた金属で、プラチナと似た色をしていながらも金属種としては、全くの別物なんです。
ちなみにホワイトゴールドは日本語で「白色金」と言います。ややこしいですね。
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