「チーグラー・ナッタ触媒」・・・口に出してみると非常に語感の良い単語ですが
普通に生活していると、あまり馴染みのない単語かと思います。
でも、化学を勉強している人は誰でも知っているような超有名な触媒で
この触媒の発見のおかげで、ポリエチレンやポリプロピレンなどの
プラスチック製品が作られ、現在の私たちの生活を豊かにしてくれています。
チーグラー・ナッタ触媒とは
一言でいうと、オレフィン(炭素-炭素の二重結合)の重合に用いられる画期的な触媒
ということになります。
その発見の歴史を紐解いてみると、次のようになります。
1953年にドイツのマックス・プランク研究所の チーグラーさん (Ziegler) は
四塩化チタン(TiCl4) がエチレンの重合に有効であることを発見しました。
一方、イタリアではミラノ工科大学の ナッタさん(Natta) さんが
チーグラーさんの発見をヒントに研究を進め、
三塩化チタン(TiCl3) がプロピレンの重合に有効であることを発見しています。
※厳密にはそれぞれ有機アルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム)との混合触媒
チーグラーさんの発見は、これまでは高圧が必要だったエチレンの重合を
高い圧力をかけずに (大気圧付近の低圧で) 重合することを可能にしました。
また、ナッタさんの発見は、これまで重合が困難だと言われていた
プロピレンの重合を可能 にしています。
そして、これらの発見をきっかけに
“重合触媒” や “有機金属化学” という化学分野が目覚ましく発展していきます。
これら2人の発見は、普段私たちがよく耳にするポリ○○といった石油化学製品の発展に
大きく貢献しており、今もなお使用され続けている非常に優れた触媒です。
ここまで読んだいただくと、お気づきかと思いますが、
実はチーグラー・ナッタ触媒とはもともと別の物で、
チーグラー触媒とナッタ触媒 この2つをひっくるめてチーグラー・ナッタ触媒と呼ばれています。
なぜひとまとめにされているかは、それぞれの触媒の構造と用途を見ればよくわかります。
化学式を見ると、これらの触媒は塩素 (Cl)が 一つ多いか、少ないかの違いです。
また、用いられる化合物もエチレンとプロピレンと
炭素が1つ多いか少ないかだけの違いですね。
似たような反応に用いられる似たような触媒なので、一般的にこれらの功績は
チーグラー・ナッタ触媒とひとまとめで語られることが多いのです。
晴れてノーベル賞受賞! でも・・・
ちなみに、2人は1963年に
「新しい触媒を用いた重合法開発と基礎的研究」
を理由として、
ノーベル化学賞を受賞しています。
この2人、面識はあったのですがその後、功績や触媒の権利について
意見の相違があり、仲が悪かった。・・・とここまでが化学界隈では有名な話です。
大抵の研究では、似た分野で似た研究をしている研究者がおり、
どちらが先だとか、誰の功績かなどで揉めるのは、よくあることです。
ただ、一緒にノーベル賞を受賞し、「チーグラー・ナッタ」とセットで紹介されることが多いこれらの触媒の開発者が
実は、仲が悪かったというのは、なんだか少し悲しい気がしますね。
コメント