18~19世紀頃まではヨーロッパを中心に「世の中の物質は火、風 (空気)、水、土 (地) の4つの元素から成り立っている」という【4元素説】が信じられていました。
今では誰もが、水は水素原子 (H) 2つに酸素原子 (O) 1つが結合した「H2O」だと知っていますし、空気は窒素 (N2) や酸素 (O2) などの気体の混合物であることを知っています。つまり、身のまわりの物質は様々な元素で構成されていることをきちんと知っていますよね。
ここまでに出てきた3つの物質だけでも、すでに合計3つの元素 (H、O、N) が登場しました。その他にも身近なところでは、二酸化炭素 (CO2) や鉄 (Fe) なんていう元素も皆さんは知っていますよね。今では合計118種類の元素の存在が知られています。
とはいえ、まだ元素、分子などの概念が知られておらず、科学に関する知識が成熟していなかった時代には、4元素説が本気で信じられていました。
4元素説の起源
4元素説を初めに提唱したのは、紀元前5世紀に活躍した古代ギリシャの哲学者 エンペドクレスだとされています。彼は万物を構成するもとは、火、風 (空気)、水、土 (地) だとし、自然界で見られる様々な現象はこれらの4つの元素が混ざり合ったり、バラバラになったりすることで起こっていると考えました。
その後、この説を受け継いだのは同じくギリシャの哲学者 プラトンです。エンペドクレスは4元素同士がくっついたり、離れたりすると考えたのに対して、プラトンはこれらの4元素は種類の異なるもの同士でもくっついたり、離れたりするし、火→水のように転化することが可能だと考えました。
※このプラトン考えでは、それぞれの4元素は異なる4面体や6面体など異なる多面体をしていて、これらがバラバラになって、別の多面体を作ることで元素の転化が起こると考えました。 (例えば、8面体を頂点で半分に切ると、4面体になりますね。そんなイメージです)
西洋で信じられていたアリストテレスの説
エンペドクレス、プラトンと考えを拡張させてきた4元素説ですが、冒頭で紹介したように長らくヨーロッパを中心に信じられてきた説は、プラトンの弟子 アリストテレスによるものです。
アリストテレスは様々な物体の特性を決めるのは「熱・冷」「湿・乾」の相反する性質の組み合わせであり、これらの性質の組み合わせにより、4元素が構成されるのだと考えました。そして、宇宙には第5の元素が存在すると。
んー、難しいですよね。いかにも哲学的です・・・
その後、アリストテレスの説はギリシャからアラビアへと伝わり、錬金術や医学に大きな影響を与えます。そしてこの説は、現在の「物質は小さな粒子 (原子) で構成されている」という“原子論”が裏付けられるまで、ヨーロッパを中心に長きにわたって信じられることになります。
中国、インドにもあった類似の元素説
4元素説のように、万物は数種類の構成要素 (元素) でできているという考え方は、中国やインドにもありました。
5行説 (中国)
中国では「万物は火、水、木、金、土の5元素から成る」という5行説 (ごぎょうせつ) があり、これら5つの元素はお互いの要素を強める「相生(そうしょう)」と弱める「相剋(そうこく)」という相互作用があると考えられていました。
このような関係図をどこかで見た事がありませんか?
色々なゲームなどに登場する「属性」は中国の5行説に着想を得ているという話もあるみたいですよ。
7または12要素説 (インド)
また、インドでは西洋の4元素と同じ「火、水、土 (地)、風 (空気)」を万物の構成要素とする考えの他、4要素に「楽、苦、霊魂」を加えた7要素で成るという説や、命あるものは更に「得、失、生、死、虚空」を加えた12要素から構成されるとする説がありました。
中国の5行説は哲学から派生した考え方で、インドの7要素説、12要素説はインドの宗教的な影響が背景にあります。これらの説は少なからず西洋の4元素説の影響を受けていると思われますが、異なる背景を持つ、異なる場所で似たような結論に至っている点は非常に興味深いですね。
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