ダウンジャケットはなぜ温かい?科学的に解明する「空気の魔法」 身のまわりの科学 X LINE コピー 2024.10.27 この記事は約6分で読めます。 スポンサーリンク 冬の寒さを防ぐための必需品であるダウンジャケット。ふわふわの羽毛が詰まったダウンジャケットを着ると、体が驚くほど暖かく感じます。その暖かさの秘密は何なのでしょうか?実は、その秘密は「空気」にあります。ダウンの中に含まれる大量の空気、それを体の周りに閉じ込めることで、寒い外気をシャットアウトし、体温を保持しているのです。本記事では、ダウンジャケットがどのように空気を使って体を温かく保っているのかを、科学的な視点から分かりやすく解説します。鍵となるは、「空気の熱伝導率の低さ」と「空気の断熱効果」です。では、その詳しい仕組みとダウンジャケットの活用方法を見ていきましょう。 目次 ダウンジャケットの温かさの秘密とは?空気はどうして温かさを保つのか?代表的な材料の熱伝導率ジャケットの素材の違いダウンとフェザーの違いダウンと中綿素材の違いは?ダウンの品質を決めるフィルパワーダウンの弱点とその対策空気を利用した他の保温技術まとめ参考資料・参考文献 ダウンジャケットの温かさの秘密とは? ダウンジャケットは、軽量でありながら非常に温かいことで知られています。しかし、なぜこんなにも温かいのか?その理由はダウンが作り出す「空気の層」にあります。ダウンは羽毛やファイバーが複雑に絡み合ったふわふわ素材であり、その中には多くの空気を含んでいます。これにより、体から発散される熱が外に逃げにくくなり、寒い外気からも体を保護します。つまり、ダウンの作り出す「空気の層」が外気と体のガード役となり、体の熱を逃げにくくしているのです。 空気はどうして温かさを保つのか? でも、空気自体はあまり温かさを感じません。では、空気の層がどのようにして体の温かさを保っているのでしょうか。ここで重要になるのが熱の伝えやすさをあらす「熱伝導率」です。熱伝導率は、低いほど熱を伝えにくく、空気はこの熱伝導率が非常に低い物質なのです。そのため、寒い外気と体の間に空気の層が存在することで、体の熱を外に逃げにくくする効果があります。これが「空気の層」が熱を閉じ込める断熱材として働く理由です。 空気の層が断熱効果を示す理由 代表的な材料の熱伝導率 代表的な材料の熱伝導率は以下の表の通りです。一般的に金属は熱伝導率が高く、熱を伝えやすい性質を持ちます。木材は熱を伝えにくく、熱伝導率は金属の1/1000程度の値です。空気の熱伝導率は木材よりも、さらに熱伝導率が低いことが知られています。 銅や鉄などの金属を触った際に、冷たいと感じるのはこの熱伝導度が関係しています。熱伝導率の高い金属は、触った手の熱が素早く移動するため、冷たく感じます。逆に、熱伝導率の低い木材などは、熱が移動しにくいため、冷たく感じにくいのです。 ジャケットの素材の違い ダウンとフェザーの違い ダウンジャケットには、羽毛(ダウン)とフェザーの両方が使用されることがありますが、この2つには明確な違いがあります。ダウンは胸毛部分から採取される柔らかい羽毛で、ふわふわの軽量かつ高い断熱性を持っています。一方、フェザーは翼や尾など胸毛以外の部分から採取され、より硬く、弾力性があるため形状の維持に優れています。ダウンジャケットでは、保温効果を高めるために主にダウンが使われ、フェザーはサポートとして使われることが多いです。 ダウンと中綿素材の違いは? ダウンジャケットとよく比較されるのが、中綿 (なかわた) を使用したジャケットです。中綿も保温性が高い素材ですが、ダウンとは性質が異なっています。ダウンが羽毛から得られる素材、天然素材であるのに対して、中綿は人工的な素材で、ポリエステルなどの化学繊維からできています。中綿は繊維が密集しており、空気を閉じ込める能力はダウンに劣ります。そのため、同じ厚さで比べた場合は、ダウンの方がより軽くて温かいのです。 ダウン, 中綿_比較 ダウンと中綿の特徴を一言であらわすと、ダウンは「軽くて温かいが、高価格」中綿は「水に強いため選択しやすく、ダウンよりも低価格」であると言えます。 ダウンの品質を決めるフィルパワー ダウンジャケットの品質を評価する指標として「フィルパワー」があります。フィルパワーとは、1オンス (約28.4 グラム) のダウンがどれだけ膨らむかを示す単位で、一般的に数字が高いほど、保温性が高く、軽量です。高いフィルパワーを持つダウンは、羽毛が細かく絡み合い、より多くの空気を含むため、軽くても非常に温かいのです。ちなみに、フィルパワー700のダウンの場合、1オンスで700立方インチ (約11.5リットル) であることを意味します。 ダウンの弱点とその対策 非常に軽く、保温性の高いダウンですが、湿気に弱いというデメリットがあります。羽毛は水分を含むと、ふわふわの構造が崩れ、空気を保持できなくなるため、保温性が急激に低下します。そのため、防水性のあるアウター素材や撥水加工が施されたダウンジャケットを選ぶことが重要です。また、近年では「撥水ダウン」などの技術が進化しており、これによって湿気に強い商品も出てきています。 空気を利用した他の保温技術 ダウンジャケット以外にも、空気を利用した保温技術は数多く存在します。アウトドア用の寝袋や断熱材なども空気の層を利用して、断熱効果を高めています。また、発泡スチロールも同じく空気を利用した断熱アイテムのひとつです。発泡スチロールは、無数の小さな空気の気泡が含まれており、これらの空気の層が熱の移動を妨げる役割を果たしています。これにより、発泡スチロールは保温箱や建築用の断熱材としても広く使用されています。 まとめ ダウンジャケットの温かさの秘密は、ダウンが空気の層を作り出すことで外気から体を守り、体温を閉じ込めるという点にあります。 この効果は、熱伝導率が低い空気の性質を利用しており、効率的に断熱効果が得られるのです。 さらに、フィルパワーが高いダウンはより多くの空気を保持し、軽量で高い保温効果を発揮します。 ただし、ダウンは水分や湿気に弱い点に注意が必要です。 ダウンが温かさを保つ仕組みや、その特性を理解することで、さむーい冬をより快適に乗り切りましょう! 参考資料・参考文献 産業技術総合研究所. 「金属の熱伝導率一覧|分散型熱物性データベース」. 取得先: https://tpds.db.aist.go.jp/opendata/metal_tc.html三井化学株式会社. 「なぜ木よりも、鉄のほうが冷たく感じるの?『熱伝導率』の原理を解説」. 取得先: https://jp.mitsuichemicals.com/jp/molp/article/detail_20200911/index.htm株式会社エコム. 「熱伝導の基礎知識」. 取得先: https://ecom-jp.co.jp/tech/detail/v92tcon.html株式会社デサント. 「ダウンジャケットとは?」. 取得先: https://www.descente.co.jp/media/wear/outer/down-jacket/
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