毎年、春の季節になると新生活が始まったり、学年が上がったりと色々な変化がありますよね。
この春から新しく研究室に配属されるというのも、大学生活における大きな転換期になるのではないでしょうか。
「でも、研究室ってどう選べばいいか分からない…」
研究室配属を控えた多くの人はこう思うのではないでしょうか。
研究室の選び方は人それぞれですが、このポイントを押さえておけば間違いない!
という内容を自身の経験をもとに記載しました。
他のブログ記事ではあまり語られていない項目についても記載していますので、しっかりとポイントを押さえて研究室選びを成功させましょう!
忙しいか、忙しくないか だけで研究室を選ばない
研究室配属前の学生によく聞かれるのが「毎日何時に帰れますか? 忙しいですか?」という質問です。
正直なところ、研究室における拘束時間は研究分野によって大きく異なります (化学の中でも大きく違う) 。
研究室に入ると、それまでの講義を受けて帰宅またはバイトや部活、サークルに行くという生活がガラリと変わります。
さっさと帰宅して趣味に時間を使いたいという気持ちも、もちろん理解できます。
ただ、研究室で過ごす時間は卒業後の知識、計画力、実験技術、考察力、レポート作成能力を鍛えるための修行期間と捉えてください。
拘束時間が長いというとは、それだけその学問と真剣に向き合っている時間が長いということです。
これは将来的には大きな自分の糧になるだろうと、私は信じています。
“やりたいこと”で選ぶ
将来的に目指す業界や、やりたいことがすでに定まっている場合
例えば、将来は半導体関係の企業に行きたい、医薬系企業に行きたいなど具体的に目指す業界が決まっている場合や、大学に残り研究者として生きていきたいと明確な目標が定まっている場合は、研究内容よりもその研究室からの就職実績や、大学研究者の排出人数を参考に研究室を選ぶのが良いでしょう。
現段階で具体的な業界や目標が見えていない場合
研究室配属時点で具体的な目標が定まっている人はごく少数で、ほとんどの人は漠然とした将来のイメージしか持っていない場合が多いと思います。
研究室配属後は、多くの時間を研究、学問に触れながら過ごすことになります。そのため、興味のない研究分野で3年 (大学4年生+修士課程2年) ないしは6年 (3年+博士課程3年) の研究室生活を送るのはなかなか大変です。
研究室配属時に明確に将来やりたことが決まっていない場合は、基本的には自分の興味のもてる分野の研究室を選ぶのがもっともシンプルな研究室の選び方ではないでしょうか。
雰囲気を理解するために、気になる研究室は何度も訪問すべし
私の出身大学では、研究室配属前の新4年生が任意で好きな研究室をまわるツアー的なものがありました。
人気の研究室ともなると、その人数は20人を超える場合もあり、なかなか自分の質問したことをいくつも聞くのは難しいかもしれません。
そう言った場合は、個別に気になる研究室を見学させてもらうのは全然OK、むしろウェルカムです。団体でさらっと研究室を眺めただけでは、本当の空気感はわからないですからね。(研究室としても外向きの顔になってしまいますし)
個別にアポを取る際、嫌な顔をされるようなら、その研究室はちょっと考え直した方が良いかもしれません。配属後のあなたへのサポートに不安が残るからです。
研究室生活を送っている先輩学生や教職員は、自分の研究テーマを進める合間を縫って対応してくれるので、もちろん大変に忙しいのですが、研究室選びに迷っている学生に対して親身に対応できないという態度であれば、配属後のわからないことだらけの状態のあなたにしっかり1つ1つ基礎を教えてくれるという可能性は低いでしょう。
研究室のメンバーは、その後の数年を一緒に過ごす仲間となります。研究内容もさる事ながら、個人的にはどのような人たちがいるのかという点も非常に重要だと思います。
それでも決め切れない時は、以下も参考に
実験器具 装置の充実度
研究には大変多くの器具、装置を使用します。少し悲しい事ですが現実問題として、研究にはお金がモノを言います。
研究資金が潤沢な研究室は豊富な器具、装置を取り揃えていますが、残念ながら資金の乏しい研究室では必要な器具が不足していて、器具待ちで実験ができなかったり、装置がなくて測定したい項目が評価できなかったりという事態が起こり得ます。
高価な装置は大学の共通設備があったり、別の研究室に貸してもらったりということができますが、予約が埋まっていて好きな時に使用できない、他所の研究室に気を使いながら装置を使わせてもらうなると、やはり不便さを感じることになりますので、研究室として器具や装置を保有していることが望ましいのです。
当然ながら、同じ分野で似たような研究をしている場合、このような器具、装置の充実度が研究速度に影響を及ぼします。
科研費 (かけんひ)
科学研究補助金の略で一般的に「科研費 (かけんひ)」と略されます。
この資金は文科省と日本学術振興会が、研究者 (またはグループ) から研究案を公募し、審査に合格すると次年度の研究に使える資金が交付されるというものです。
金額としては最大で年間1億円となるものもあり、この資金は研究に必要な物品 (試薬、器具、装置等) に使用することができるので、科研費がもらえるかもらえないかで、研究室の懐事業が大きく変わってきます。
つまり、研究において使用できる費用は、研究室ごとにかなり差が出てくるわけです。 (配属前にはあまり説明されませんが、とても重要な事です。)
研究室選びの本質ではありませんが、どうしても決め手がない場合、科研費も1つの指標にはなるのではないでしょうか。
科研費ついて、誰にどれだけ交付されているかが以下のサイトで公表されています。気になる研究室の先生の名前で検索すると色々と情報が得られます。
科学研究費助成事業データベース https://kaken.nii.ac.jp/ja/index/
学振採択率
科研費がすでに博士号を取得した研究者を対象としているのに対して、博士課程の学生を対象とした似たような制度があります。
それがいわゆる「学振」と呼ばれる制度です。DCと言われる事もあり、よく研究者のプロフィール欄でDC1とかDC2と書いてあるのは、このことを指しています。正式には「特別研究員」といいます。日本学術振興会の特別研究員なので、便宜上「学振」と呼ばれることが多いのですね。
学振に採用されると何が良いのかというと、博士学生の場合 月20万の給料がもらえるという点です。これは奨学金と違い返済する必要がありません。また、採用された博士学生の研究テーマについて、年間100万円程度の研究費が交付されます。
学振に採用されるためには、科研費と同様に研究案を基にした審査をパスする必要があり、その採用率は約20%と比較的狭き門となっています。したがって、学振に採用されたという事実は、その後の就職、教員採用時のステータスになる場合があります。
前置きが長くなってしまいましたが、この学振の審査において所属研究室による差が生じることが多々あるのです。
基本的には、学振の審査は研究者個人の研究計画や実績を評価するため、指導教員や所属研究室による影響はないことになっています。あくまでも建前上は・・・。ただし、これらの研究案を評価するのは近しい分野の別の研究者。つまり「○○先生のところの学生なら間違い無いだろう」とか「師匠である○○先生のところの学生に低い評価は付けにくいな」などと言ったことが起こりかねないわけです。
ひどい場合は「聞いたことのない先生のところだし、よくわからないから低評価」ということも可能性としては考えられます。これらは、あくまでも審査でどこかで差をつけなければならないため、評価に迷った場合は有名な研究室の学生が有利になるのは理解に難くない話だと思います。
研究室見学の際、学振採用率を聞いてみてください。採用率20%でありながら、毎年採用者を出している研究室とほぼ毎年落ちている研究室があるはずです。
修士号取得後、就職予定の学生は特に気にする必要はありませんが、博士課程への進学も視野に入れている学生はこの点は要チェックです。
さいごに:希望の研究室に行けなくても逆転のチャンスあり
どれだけ吟味して研究室を選んでも、成績や運によっては希望の研究室に行けない場合もあります。
最初は落胆とすると思いますが、気を落とすことはありません。
結果的に配属された研究室でやりがいを見つけ、心身ともに成長できる研究室生活を送れていれば何の問題もありません。
ただ、どうしても希望の研究室に行きたい! という場合は、大学院入試で逆転が可能です。
大学ごとに制度は異なりますが、研究室配属は1~3年生までの成績や、その時の運が配属に影響しますが、大学院入試では試験成績の一発勝負となります。つまり、4年生の時にどこの研究室に所属していたかは関係ないのです。
多くの大学では、大学院入試における定員割れの状況が見られますが、「大学院に入れるかどうか」と「希望の研究室に入れるか」は全くの別問題です。一見、ほとんど形だけの試験で大学院に入れるような印象を受けますが、実際には研究室配属をかけた大勝負が繰り広げられているのです。
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